秋月ファンクラブ掲示板

inara1(2018/05/06 Sun 10:17) [ 編集 ] [ 返信 ]

NJM072とNJM072Bの違い

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前のスレッド「スイッチのおもちゃ」
http://mpga.jp/akizuki-fan/index.php?mode=thread&id=3724&page=1
の「Re^15: スイッチのおもちゃ」
http://mpga.jp/akizuki-fan/index.php?mode=article&id=3748&page=1
でNJM072はBがついたほうは若干スピードが遅いと書きましたが、NJM072DとNJM072BDの違いを実測してみました。

データシート
http://akizukidenshi.com/download/ds/njr/NJM072_NJM072B_NJM082_NJM082B_J.pdf
の2ページ目にNJM072DとNJM072BDの電気的特性が出ていますが、NJM072DとNJM072BDで違うのは、スルーレートとユニティゲイン周波数だけです。スルーレートとは、出力信号の電圧がどれだけ速く変化できるかを表わす特性で、1μsあたり何V変化するかというものです。

BのつかないNJM072Dのスルーレートの標準値は20V/μs、NJM072BDは13V/μsとなっています。ユニティゲイン周波数は電圧利得が1となる周波数で、NJM072BDが5MHz、NJM072BDが3MHzとなっています。オペアンプで電圧増幅回路を作ったときに、ユニティゲイン周波数より高い周波数では電圧利得を1以上にできません。一般にユニティゲイン周波数が高いオペアンプはスルーレートも高い傾向があります。

ユニティゲイン周波数は、出力振幅があまり大きくない(0.1Vpp未満)場合にどれくらいの周波数まで扱えるかの指標になるのに対して、スルーレートはそれより振幅の大きい出力波形がどれだけ歪むかの指標になります。入力が矩形波のとき、オペアンプのスルーレートが小さいと、出力波形の立上がりと立ち下がりがゆっくり変化するため、出力波形が台形状になってしまいます。この台形の斜面の傾斜がスルーレートになるので、出力波形観測をすればスルーレートを求めることができます。

添付図は、振幅が-0.5V〜+0.5V、周波数が100kHzの矩形波を入力したときのNJM072DとNJM072BDの出力波形です。測定回路は、電圧利得が11倍の非反転入力増幅回路なので、出力波形の振幅は11Vppになります。波形の立上がりと立ち下がりは0.1μs以内なのに対して、出力波形の立上がりと立ち下がりはそれより明らかに遅くなっています。

この傾斜を測定してみるとNJM072BDが18.4V/μs、NJM072BDが13.3V/μs、となりました。データシートではNJM072Dのスルーレートは20V/μsとなっていますが、これは標準値で、実際にどれくらいの幅のバラツキがあるのかは書いてありませんが、データシートの値から大きく違ってはいません。

NJM072はテキサスインスツルメンツ社のTL072のセカンドソースですが、オリジナルのTL072のデータシート
http://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tl072.pdf
にはスルーレートの記載がありません。

このように、NJM072DとNJM072BDではスルーレートが違っていることが確認できましたが、矩形波発振回路では、出力波形がちゃんと矩形波になっている必要があるので、スルーレートの大きいオペアンプを使う必要があります。今回作製した三角波・矩形波発振器の上限周波数は100kHzくらい、出力振幅は最大±10Vくらいなので、この測定条件は最も厳しい条件になります。NJM072Dを使った場合でも、100kHz・±10Vの波形は完全な矩形波とは言えませんが、±15Vの電源電圧で動作するオペアンプで、スルーレートが20V/μs以上あるようなものは少ないです(あっても高価)。

ちなみに私は以前、半導体集積回路(アナログIC)のテスト回路とテストプログラムを開発する仕事(テストエンジニア)をしていましたが、データシート上に標準値(代表値)しか書かれていない項目は、量産で特性試験をしていない項目でした。測定しないのはコスト削減のためです(当時、測定時間1秒で1円の測定コストがかかると言われていた)。私がいた会社では量産品は1個ずつ全て特性試験を行っていました(全数検査)が、データシートに出ている項目を全て測定しているわけではありません。

私がテストエンジニアだった頃(30年前)、測定回路によく使っていたのが、ナショナルセミコンダクタ社(最近テキサスインスツルメンツ社に買収された)のLH0032CGというハイブリッドオペアンプです。これは今でもオーディオマニアの間で有名なオペアンプです。

オリジナルのデータシートが見つからないのでセカンドソースのデータシート
http://www.calogic.net/pdf/LH0032_Datasheet_Rev_A.pdf
を見ると、スルーレートが500V/μs、ユニティゲイン周波数が80MHzと非常に高速です。FET入力なので入力バイアス電流はpAオーダと非常に小さく、出力電流は100mAくらいは取り出せます。オーディオ用でなぜこのような性能が必要なのか全く理解できませんが、ヤフオクでは1000円以上するようです。
https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/closedsearch/lh0032/0/

今回の発振器もオペアンプにLH0032を使えば発振周波数の上限をもっと高くできます。


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  1. [3933] 前のスレッド「スイッチのおもちゃ」
    http://mpga.jp/akizuki-fan/index.php?mode=thread&id=3724&page=1
    の「Re^15: スイッチのおもちゃ」
    http://mpga.jp/akizuki-fan/index.php?mode=article&id=3748&page=1
    でNJM072はBがついたほうは若干スピードが遅いと書きましたが、NJM072DとNJM072BDの違いを実測してみました。

    データシート
    http://akizukidenshi.com/download/ds/njr/NJM072_NJM072B_NJM082_NJM082B_J.pdf
    の2ページ目にNJM072DとNJM072BDの電気的特性が出ていますが、NJM072DとNJM072BDで違うのは、スルーレートとユニティゲイン周波数だけです。スルーレートとは、出力信号の電圧がどれだけ速く変化できるかを表わす特性で、1μsあたり何V変化するかというものです。

    BのつかないNJM072Dのスルーレートの標準値は20V/μs、NJM072BDは13V/μsとなっています。ユニティゲイン周波数は電圧利得が1となる周波数で、NJM072BDが5MHz、NJM072BDが3MHzとなっています。オペアンプで電圧増幅回路を作ったときに、ユニティゲイン周波数より高い周波数では電圧利得を1以上にできません。一般にユニティゲイン周波数が高いオペアンプはスルーレートも高い傾向があります。

    ユニティゲイン周波数は、出力振幅があまり大きくない(0.1Vpp未満)場合にどれくらいの周波数まで扱えるかの指標になるのに対して、スルーレートはそれより振幅の大きい出力波形がどれだけ歪むかの指標になります。入力が矩形波のとき、オペアンプのスルーレートが小さいと、出力波形の立上がりと立ち下がりがゆっくり変化するため、出力波形が台形状になってしまいます。この台形の斜面の傾斜がスルーレートになるので、出力波形観測をすればスルーレートを求めることができます。

    添付図は、振幅が-0.5V〜+0.5V、周波数が100kHzの矩形波を入力したときのNJM072DとNJM072BDの出力波形です。測定回路は、電圧利得が11倍の非反転入力増幅回路なので、出力波形の振幅は11Vppになります。波形の立上がりと立ち下がりは0.1μs以内なのに対して、出力波形の立上がりと立ち下がりはそれより明らかに遅くなっています。

    この傾斜を測定してみるとNJM072BDが18.4V/μs、NJM072BDが13.3V/μs、となりました。データシートではNJM072Dのスルーレートは20V/μsとなっていますが、これは標準値で、実際にどれくらいの幅のバラツキがあるのかは書いてありませんが、データシートの値から大きく違ってはいません。

    NJM072はテキサスインスツルメンツ社のTL072のセカンドソースですが、オリジナルのTL072のデータシート
    http://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tl072.pdf
    にはスルーレートの記載がありません。

    このように、NJM072DとNJM072BDではスルーレートが違っていることが確認できましたが、矩形波発振回路では、出力波形がちゃんと矩形波になっている必要があるので、スルーレートの大きいオペアンプを使う必要があります。今回作製した三角波・矩形波発振器の上限周波数は100kHzくらい、出力振幅は最大±10Vくらいなので、この測定条件は最も厳しい条件になります。NJM072Dを使った場合でも、100kHz・±10Vの波形は完全な矩形波とは言えませんが、±15Vの電源電圧で動作するオペアンプで、スルーレートが20V/μs以上あるようなものは少ないです(あっても高価)。

    ちなみに私は以前、半導体集積回路(アナログIC)のテスト回路とテストプログラムを開発する仕事(テストエンジニア)をしていましたが、データシート上に標準値(代表値)しか書かれていない項目は、量産で特性試験をしていない項目でした。測定しないのはコスト削減のためです(当時、測定時間1秒で1円の測定コストがかかると言われていた)。私がいた会社では量産品は1個ずつ全て特性試験を行っていました(全数検査)が、データシートに出ている項目を全て測定しているわけではありません。

    私がテストエンジニアだった頃(30年前)、測定回路によく使っていたのが、ナショナルセミコンダクタ社(最近テキサスインスツルメンツ社に買収された)のLH0032CGというハイブリッドオペアンプです。これは今でもオーディオマニアの間で有名なオペアンプです。

    オリジナルのデータシートが見つからないのでセカンドソースのデータシート
    http://www.calogic.net/pdf/LH0032_Datasheet_Rev_A.pdf
    を見ると、スルーレートが500V/μs、ユニティゲイン周波数が80MHzと非常に高速です。FET入力なので入力バイアス電流はpAオーダと非常に小さく、出力電流は100mAくらいは取り出せます。オーディオ用でなぜこのような性能が必要なのか全く理解できませんが、ヤフオクでは1000円以上するようです。
    https://auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/closedsearch/lh0032/0/

    今回の発振器もオペアンプにLH0032を使えば発振周波数の上限をもっと高くできます。
    NJM072とNJM072Bの違い
    inara1 2018/05/06 10:17 *
    1. [3934] とても難しいです。
      > 入力が矩形波のとき、オペアンプのスルーレートが小さいと、出力波形の立上がりと立ち下がりがゆっくり変化するため、出力波形が台形状になってしまいます。

      というところだけわかりました。

      > (当時、測定時間1秒で1円の測定コストがかかると言われていた)。

      「電算機」を時間いくらで使っていた時代でしょうか。Man-Hoursで計算するとということなのかな。

      > LH0032CGというハイブリッドオペアンプ・・・今でもオーディオマニアの間で有名なオペアンプ

      検索すると、伝説の云々といろいろ出てきました。オーディオの世界はさっぱり知りません。
      Re: NJM072とNJM072Bの違い
      daruma 2018/05/06 11:00
      1. [3936] >とても難しいです
        難しいですか。やさしく書いたつもりでしたが。

        >「電算機」を時間いくらで使っていた時代でしょうか
        電算機なんて時代じゃないです。LSIテスターという大型コンピュータみたいな装置で測定するのですが、これが1台1億円するのです。これです。
        http://www.mandisate.com/products_LTX77.html
        量産工場ではこれが何十台も並んでいました。この装置の減価償却費を稼働時間で割ると4円/秒になるのです。

        あの頃は社員1人にPCが1台という時代じゃないので、VAXというミニコンを使っていました。インターネットもない時代なので測定プログラムを磁気テープに保存して工場に送ってました。今でもLSI設計分野でTapeOutという用語(最終出図の意味)が残ってますが、これはレイアウトデータをテープに保存していたときの名残です。
        Re^2: NJM072とNJM072Bの違い
        inara1 2018/05/06 11:30
        1. [3937] > 難しいですか。やさしく書いたつもりでしたが。
          読んでふむふむと筋はわかるのですが・・・。

          1億円の機械が何十台もですか。モノづくりの大メーカーは凄いですね。

          VAXは本物は見たことありませんが知っています。

          > TapeOutという用語(最終出図の意味)が残ってます
          なるほど、感慨深い用語ですねえ。
          Re^3: NJM072とNJM072Bの違い
          daruma 2018/05/06 11:39